わが20冊 (5)生原稿本

手製本を学ぶようになって、いつか小説家の生原稿を製本することが夢だった。
朱の直しで真っ赤になった原稿、きっとそれは活字で読むのとは違って著者の息づかいが直接伝わってくるにちがいないと思った。
芥川賞の受賞作となった吉田知子さんの『無明長夜』の生原稿をご自宅で目の当たりにする機会に恵まれた。
思ったよりもきれいな原稿だった。はじめは真っ赤だったけど何回も書き直して、これは十回目ぐらいなのよと言われた。
思い切ってこの『無明長夜』の生原稿を製本させてくださいと言った。わたしは自分の字を人に見せたくないと即座に断られた。
それでもなんどかお会いするうちに、なるべく直しの入っていない生原稿ならあげるから、自由にしていいわよと言ってくれた。
そしてこの原稿本が生まれた。そのうち、作家の生原稿はパソコンで打ち出された活字の原稿となり、万年筆や鉛筆で書かれた原稿は姿を消した。
生原稿を製本するという機会はなくなった。この本が唯一の宝物になった。今回革で装幀し直した。


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Commented by ゲキト at 2018-08-17 16:30 x
分からない。何度も読むんだが分からない。それがこの作品の印象。いまだ持ってそう。
この難解な非小説を見事に腑分けする折金さんも
実に謎めいた人ではある。
あ、肝心のこの装幀。見事なもんだと分かりもせんのに、感じる。
吉田知子さんの世界にふさわしい造本、装幀デザインだと思う。
言いたいことは、<手作り製本の素晴らしさ>です。これは拝見したいですね。触ってみたいですね。お願いできますか?
Commented by hontokami at 2018-08-17 17:15
9月からの喫茶店「シーン」で開かれる秋のO塾合同展に出品させてもらう予定です。ぜひみてください。
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by hontokami | 2018-08-16 16:23 | Comments(2)