カテゴリ:こころ( 76 )


自分自身痛切に味わった事実、血が熱くなったり、脈が止まったりするほどの事実が畳み込まれている(15)としたら
これは漱石自身のそうした体験(「私の個人主義」)から獲得した自己本位の思想をここで吐露しているのかもしれない。
解釈してみた。なにかしっくりこない。だれか助けてください。夜が明けてきた。前の森で鶯が鳴き出した。
なんか迫ってないなーと鳴いている。もっと自然に、と鳴いている。
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かつては其人の膝の前にひざまづいたといふ記憶が今度はその人の頭に足を載せさせやうとするのです。
私は未来に侮辱を受けないために、今の尊敬を斥けたいと思ふのです。
私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代りに、淋しい今の私を我慢したいのです。
自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は其犠牲としてみんな淋しみを味はわなくてはならないでせう。
                                                  「こころ」14
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Kにひざまづいてまでして、「自分自身の向上のために一緒に住んでくれ」とお願いしたのに、そんなに懇願してまで来てもらったのに、
こんどはそんなKとの友情を裏切って、お嬢さんをもらうために卑怯なやりかたをしてしまった。
父に恩義をもって接していた叔父だってが父が亡くなると、てのひらを返したように父を裏切って財産を奪ってしまった。
これが人間の常なんだ。
だからいま私を信用しようとしているあなただって、いつかそのことを後悔し私の頭に足を載せて侮辱するにちがいないのだ。

わたしは
将来にやって来るであろうおおきな孤独感に堪えるためにも今のだれからも忘れ去られたように
ひっそり淋しく生きている自分を我慢しなくてはいけない。

そんな私を信用してはいけません。

そういう時代になったのだ。人は生まれてきたからには、自己実現のなにかしなくてはいけない。そういう権利に目ざめた。
家や地域社会の束縛から解き放たれて自由に生きていっていいのだ。
だがその代償として、酬いとして、孤立感、孤独感という淋しさを味わうことを覚悟しなくてはならない。




by hontokami | 2018-05-26 05:24 | こころ

お嬢さんから奥さんへ

お嬢さん
下宿時代、先生が無理矢理Kを連れてくる前は、当然のようにお嬢さんと結婚する方向に進んでいく。
そこには(お嬢さんのお母さんの心配りもあってのことだろう。3人で日本橋に出かけ、お嬢さんに着物の反物を贈る。
その後夕食を共にして夜遅く家につく。

先生がKを連れてくることに奥さんはめんどうなことにならないだろうかと反対する。
案の定、お嬢さんは二人の下宿人の世話をするのだが、時折、先生が焼き餅を焼きたくなるような行動をとるのだ。
先生が玄関を開けるとKとお嬢さんの笑い声が聞こえてくる。先生が上がってくるとお嬢さんはすれ違いに部屋を出ていく。
初冬の寒い雨の降る日のこと、先生が早く部屋に戻って火鉢で暖を取ろうとしたら、Kの部屋の火鉢には継ぎたての火が暖かそうに燃えているのに、
先生の部屋の火鉢は冷たいまま。先生は不愉快になる。奥さんがあわててKの部屋の火鉢を持ってくる。
先生はkもお嬢さんもいない家にわびしさを感じて賑やかなところに行きたくなって家を出る。
先生は不愉快な思いのまま、ぬかるんだ坂道を下っていくと逆に坂道を上ってくるKをみかける。
そしてその後ろにお嬢さんがいた。たまたまそこで出会ったんだという。
嫉妬に自分を抑えることの出来ない先生は夕食の時に
お嬢さんに質問をする。お嬢さんは気を持たせるような嫌な笑い方をして「どこへ行ったかあててごらんなさい」などと言って先生の嫉妬心にさらに火をつける。
それは若い女性によくある技巧というものだろうかと、先生は不愉快になる。

結婚してからの奥さん(=「私」からみた奥さん)
「自分に頭脳があることを相手に認めさせて、そこに一種の誇りを見いだす(16)」ようないわゆる新しい女ではない、
かといって旧式の日本の女らしくもない(18) 
もっと底の方にある沈んだ心を大事にしてる。
世の中の何方を向いても面白そうでな先生の心を何とかして理解して先生を支えてあげたいと思っている。
先生が自分の悩みに奥さんだけは巻き込みたくない、という配慮がかえって奥さんを苦しめている。
二人は仲がいい。一緒に音楽会にいったり、旅に出ることもある。



by hontokami | 2018-05-24 20:56 | こころ

予感の金木犀

大学を卒業した「私」に先生が祝い膳を設けてくれた。奥さんはアイスクリームを作ってくれ、「私」はおかわりをした。
つい話し込んでしまい10時頃先生宅を辞した。
ぼくはこのシーンがとても好きだ。
この場面は先生と「私」がもう二度と会うことがないだろうことを暗示している。
「こころ」のなかで分岐点に位置しているように思うのだ。

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先生と奥さんは玄関まで送って出た。
「ご病人をお大事に」と奥さんがいった。
「また九月に」と先生がいった。
 私は挨拶をして格子の外へ足を踏み出した。玄関と門の間にあるこんもりした木犀の一株が、私の行手を塞ぐように、夜陰のうちに枝を張っていた。
私は二、三歩動き出しながら、黒ずんだ葉に被われているその梢を見て、来たるべき秋の花と香を想い浮べた。
私は先生の宅とこの木犀とを、以前から心のうちで、離す事のできないもののように、いっしょに記憶していた。
私が偶然その樹の前に立って、再びこの宅の玄関を跨たぐべき次の秋に思いを馳せた時、今まで格子の間から射していた玄関の電燈がふっと消えた。
先生夫婦はそれぎり奥へはいったらしかった。私は一人暗い表へ出た。
 私はすぐ下宿へは戻らなかった。国へ帰る前に調のえる買物もあったし、ご馳走を詰めた胃袋にくつろぎを与える必要もあったので、
ただ賑やかな町の方へ歩いて行った。町はまだ宵の口であった。用事もなさそうな男女がぞろぞろ動く中に、
私は今日私といっしょに卒業したなにがしに会った。彼は私を無理やりにある酒場へ連れ込んだ。
私はそこで麦酒の泡のような彼の気えんを聞かされた。私の下宿へ帰ったのは十二時過ぎであった。
                                               「こころ」三十五
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by hontokami | 2018-05-24 18:45 | こころ

Kのこと

夕方、中嶋さんが秋野美術館に出掛けた帰りだといって、わが家に立ち寄ってくれた。役所の配属先が替わってから久しぶりだった。
漱石の「こころ」の話になった。

私「Kはほんとにお嬢さんとそこでたまたま出会ったのかな?2人でどこかへ遊びに行ったのではないかな?」
彼「Kはそういうところでは嘘がつけない、不器用な男だと思うのです。ホントにそこで出会って一緒に帰ってきたんだと思います」
私「じゃあ、お嬢さんはなんで、何処へ行ったか当てててごらんなさいなんて気を持たせるような言い方をしたんだろう?。すなおに言えばいいのに」
彼「きっとそういうわざと気を引くような技巧が、先生は嫌いだったんでしょうね」
私「先生の嫉妬の炎はメラメラ燃えているね」
彼「お嬢さんって罪な人ですよね」

時計をみたら8時を過ぎていた。中嶋さんはあわてて帰って行った。
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by hontokami | 2018-05-20 08:48 | こころ

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「そんな役にも立たないこといつまでもくだくだ考えていないで、
「はさみや爪切りは使ったら、ちゃんと元へ戻すことのほうが大事じゃないの」
という声が聞こえてきた。

by hontokami | 2018-05-09 16:22 | こころ

ものがたり4 立ち聞き

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by hontokami | 2018-05-09 11:59 | こころ

ものがたり1

私的なものがたりは
漱石の『こころ』と『夢十夜』に収斂されていく。
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by hontokami | 2018-05-01 15:51 | こころ